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2015.01.08 Thursday

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    2014.11.15 Saturday

    鏝絵細工を探す旅 〜 極彩色の後を遺す不動堂の二十四孝(群馬県富岡市)

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      官営模範工場として開業し、日本の製糸業の発展に大きな影響を及ぼした群馬県富岡市の富岡製糸場は世界遺産、次いで国宝として登録され、連日の賑わいを見せています。

      その喧騒をよそに
      製糸場からそう遠くない同市富岡に成田山不動堂があり、お参りに訪れる人も稀なようで終日静かに佇んでいます。


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      説明書きによると、この不動堂は古くから同地に居住していた多治見福寿坊という修験者の内仏堂だったということです。



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      福寿坊第23代の多治見賢友が不動尊を勧請し、享保元(1716)年に創建したのが始まりといわれています。


      その後、明治元(1868)年の神仏分離令とそれにもとづく廃仏運動のなかで、多治見福寿坊が同5年に廃坊となります。



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      しかし、同17(1884)年になって信仰心の篤い信徒たちが成田山新勝寺で不動尊を再開眼奉安します。


      この結果、成田山分霊所として公称することを許されたといわれるお堂です。



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      堂の外観は二重に尖塔形の屋根で覆い、堂全体を保護しているようです。


      デザインがかなり斬新で違和感がないわけではありませんが、取りあえず風雨などによる経年損壊から当座免れるのならば是と考えた方が良いのかもしれません。



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      この不動堂の内外壁にたくさんの極彩色の漆喰細工が施されていて、実に見応えがあります。


      長い歳月を経て来て、色褪せなどが見られるものの“いい味”を出しています。


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      正面の拝殿に龍、鶴に乗った仙人、松を背景にした(じょう)と姥(うば)が目に飛び込んできます。


      鶴に乗っているのは王子喬という仙人で、周の霊王(?〜紀元前545)の太子といわれ笙を吹くのが巧みで、 まるで鳳凰が鳴くかのような音をたてたと伝わります。



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      鶴に乗る姿は王子喬が嵩高山に登ってそのまま消息が分からなくなってから30年後に現われた姿で、この後また飛び去り人々は祠を建てて祀ったといいます。



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      尉、姥は謡曲「高砂」に出てくるの老夫婦で、夫婦繁栄、長寿の象徴とされてきた姿を表しています。



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      尉、姥は必ずセットで、尉は熊手を持ち姥は箒を持つ姿で描かれるのが多く、松も組み合わせとして描かれます。



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      これらの下に巨大な龍が梁に巻き付くような形で細工されています。


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      そして、左右の横壁に故事来歴や二十四孝(にじゅうしこう)に因んだ話をテーマにして制作しています。



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      二十四孝とは、かつて中国では儒教の教えを重んじ、歴代の中国王朝は孝行を特に重要な徳目として後世の模範になるよう孝行に優れた人物24人を取り上げて書物に著し、孝として教育しました。



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      その後、これが日本にも伝来し四字熟語になって教育材料として使用されたり、仏閣の建築物や祭礼の時の山車装飾などに描かれるようになります。



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      例えばこれは、二十四孝の楊香(ようこう)の話を描いているようです。


      楊香は父と山に入った時に虎と遭遇します。父の命を守るために追い払おうとして立ち向かいます。


      しかし、敵わなかったので天に自らを犠牲にし、父を守りたまえと祈ると虎が退散し無事に父子で家に帰ることができたというストーリーです。



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      こちらは二十四孝の剡子(ぜんし)について描いています。


      剡子の父母は眼を患ってしまいます。剡子は眼には鹿の乳が良いということを知り、鹿の群れの中に 紛れ込もうとして鹿の革を着て山に入ります。


      そこを狩人に本物の鹿と勘違いされ、撃たれようとします。


      剡子は狩人になぜこんなことをしているのかを必死に語ります。それを聞いた狩人は 剡子の親孝行に心打たれます。



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      これは郭巨(かっきょ)を描いた漆喰の鏝絵ですし…


         

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      これは象が出てきますので、舜王を描いています。


      舜は家族から酷い仕打ちを受けていたにもかかわらず孝行を尽くします。


      それを尭が聞きつけ、摂政とさせ最後には王位を禅譲し舜は王となります。


      舜を描く時、その挿話から象が田を耕し、 鳥が田の草をついばみ、舜が童形の姿でいることが定型になっています。



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      このようにして鏝を振るって壁に細工を施した鏝絵師が何を描こうとしていたのか、思いめぐらしながら見るのも楽しいものです。


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      これは何を描いているのでしょうか?



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      ただ残念なのは、堂に向かって右側の横壁に塗られている作品の損傷が激しいことです。



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      こちらは、二十四孝の王祥の孝行譚を描いたと思われる作品ですが、頭部が失われています。


      象とともに描かれていた舜王も肝心の顔の部分がありませんでした。



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      こちらも無くなっていますし…



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      これにもありません。


      それも各作品中の人物の顔部分が失われているという特異な共通点です。



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      鏝絵に立体感を付けるため、鏝絵師は芯になる部分に様々な骨材を使用し、その上に漆喰を塗り込めて作品を仕上げて行きます。

      しかし、顔の部分だけが経年劣化によって剥離、剥脱するということは、およそ考えられません。

      人為的に手が加えられたことにほぼ間違いありません。

      早く有効な保護策を講じないと損壊が進みかねません。


                                  Dsc_0028                                      

      不動堂ですから、奉祀するご本尊は不動明王です。


      成田山新勝寺のご本尊は、 嵯峨天皇の勅願により弘法大師が一刀三礼敬刻開眼した不動明王の霊像です。


      堂内には鍵が掛かっていて入れませんし、暗くて中の様子が分かりません。



                                  Dsc_0031


      格子戸にレンズを押し当てストロボを焚いて見ると、本堂に祀られている不動明王の姿が見えてきました。 

                               

                                    

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      不動明王の周辺にも漆喰細工が施されているようです。


      説明板に「内部には天井いっぱいに龍が駆けめぐり(損壊激しく保存撤去)」と記されています。


      保存撤去は保存のために天井から取り外し別の場所に保存してある、という意味でしょうか。



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      また、戸前の土扉が傷んで扉は床板の上にあり、壁に立てかけるようにしてあります。



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      富岡製糸工場は世界遺産、国宝となり手厚い保護策が採られるようになりましたが、不動堂にはこれといった保存策がなされているようには見えません。

      先人たちからの名もない遺産かもしれませんが、
      同じ市内にあってこれ以上の破損が起こらないような策を講じてもらえないものでしょうか。


      2015.01.08 Thursday

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