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2015.01.08 Thursday

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    2013.12.17 Tuesday

    鬼師が遺した飾り瓦  甲冑をまとった3体の鍾馗像(長野県長野市)

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      江戸時代、下氷鉋(しもひがの)の地域は松代藩領でした。明治9(1876)年に中氷鉋村と下氷鉋村が合併し氷鉋村となりますが、その後分立、明治22(1889)年に下氷鉋村と周辺3村が合併し稲里村となります。

      稲里村は昭和30(1955)年に近隣の真島村、青木島村などと合併して更北村となり、さらに同41(1966)年になって更北村は隣接する長野市、篠ノ井市、松代町などと合併し新たに長野市を形成します。

      長野市下氷鉋の広い敷地内に建つN家に、瓦鍾馗の飾り瓦が小屋根の上に上がっていました。

      昔から代々この地で暮らし 、現在の母屋を建ててから100年近くなっているといいます。
      部分的な改築は何度か行っているものの瓦鍾馗は、母屋新築時には挙がっていたことは確かだといいます。


      現当主は「水の神ということで聞いていますよ。新築時に飾ったのか、それ以前にあったものを縁起を担いで新しい家に挙げたのかは分かりません」と語っています。



      Img_0478


      実によくできた装飾瓦で、熟練した腕を持つ鬼師でないとこのように立派な鍾馗は作れません。なんという鬼師が制作したのか、いろいろ考えました。そこで思いついたのが、神谷喜三郎(1849−1922年)です。


      愛知県碧海郡高濱村(現高浜市)出身の三河鬼師の神谷喜三郎は、明治20(1887)年ころに須坂市の瓦屋の森山家に招かれ鬼瓦制作の技術を教えに来ています。


      喜三郎は故郷へ戻らず、明治20年代末期になって真島村(現長野市真島)で所帯を持ち、窯元として瓦店を構えます。出身地の三州から腕のいい鬼師を呼び寄せ住み込ませています。



      Img_0473


      「当時長野市の川南には、まだ鬼瓦を作る者が少なく、必然的に川南の鬼の多くは喜三郎がてがけたと言われ、真島の周辺では今も喜三郎が作ったと言われる役物瓦や鬼瓦が残っています」(『「屋根瓦は変わった」〜信州の瓦屋と三州の渡り職人〜』長野市立博物館編)と記されています。


      この中で、川南とは市内を流れる犀川の南側を指し、瓦鍾馗があった下氷鉋や真島もこの地域になります。真島と下氷鉋の間は4kmほどですから、真島で制作焼成して施主宅までは十分に運べる距離です。


      ですから、この瓦鍾馗を制作したのは喜三郎自身と見るのが妥当なところかもしれません。


      下は下氷鉋から北側へ500mほど離れた旧丹波島宿の東外れに「つるや」の屋号で昔、旅籠を営んでいた宅に上がっている瓦鍾馗です。



      Img_3867


      右手の刀剣の持ち方こそ違いますが、顔髭のはね方、着衣のなびき方と柄、胴の防具、前紐の結び方、両足の位置と踏ん張り方等々、多くの点で一致します。間違いなく同じ鬼師の作と言えます。

      そして、喜三郎作ではないかと強く思うようになったのは、喜三郎が三州から技術指導に招かれて草鞋(わらじ)を脱いだ須坂市の森山家に保存されている一体の鍾馗からです。

      あの彩色が施された跡が見える金属の刀剣を手にした鍾馗像です。喜三郎が長野・真島に居を構える以前の作です。


      この瓦鍾馗は他の鍾馗像に見られない特徴をもった作品ですが、甲冑(胴)をまとっているのも、特徴の一つです。



            Img_4505                            

      長野県内にこれまで確認できた数多くの瓦鍾馗のなかでも、鎧(よろい)を身に着けているのは、この3点だけです。そして3作品とも神谷喜三郎の足跡と一致するのです。


      傍証といえばその域を出ませんが、鬼師の多くは自ら作った飾り瓦に銘を入れるようなことはほとんどしなかったといいます。


      それは「『自分たちは生活の品を作っているのであり、芸術作品を作っているのではない』また『名前を残したくて作っているのではない』といった意識があったためだと思われます」(前掲書)。


      世評に動ずることなくもくもくと制作に勤しむ鬼師たち、職人の姿が目に浮かんできます。




      2015.01.08 Thursday

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